受賞ギャラリー
2016
グッドデザイン特別賞[未来づくり]
音知覚装置
髪の毛で音を感じる新しいユーザインタフェース「Ontenna」
受賞対象の詳細
Ontennaは、ヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザに伝える新しいユーザインタフェース装置です。「まるで、ねこのヒゲが空気の流れを感じるように、髪の毛で音を感じることのできる装置」をコンセプトに、ろう者と協働して新しいユーザインタフェースの開発を試みました。Ontennaは、30dB〜90dBの音圧を256段階の振動と光の強さに変換して、音の特徴をユーザに伝達します。音源の鳴動パターンをリアルタイムに振動と光に変換することで、音のリズムやパターン、大きさを髪の毛を用いて知覚することができます。
※ 自動翻訳サービスDeepLを利用して生成されたテキストの場合があります
プロデューサー
富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 総合デザインセンター 本多達也
ディレクター
富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 総合デザインセンター 本多達也+富士通デザイン株式会社 高見逸平
デザイナー
富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 総合デザインセンター 本多達也+富士通デザイン株式会社 高見逸平

左から)本多達也 高見逸平
詳細情報
利用開始
2016/05
販売地域
国内・海外共通仕様
背景
開発者は、大学一年生の時にろう者と出会ったことがきっかけで手話の勉強を始め、手話通訳のボランティアや手話サークルの立ち上げ、NPOの設立などをろう者と共に経験してきました。卒業研究では人間の身体や感覚の拡張をテーマに、ろう者と協働して新しい音知覚装置の研究を始めます。現在は富士通に入社し、オープンイノベーションのもとデザイナーやエンジニア、社内外の人たちを巻き込みながらプロジェクトを進めています。
経緯とその成果
まるで猫のヒゲが空気の流れを感じるように、髪の毛で音を感じることのできる装置
デザイナーの想い
いままでの5年間、ろう者と一緒になって新しい音知覚装置の研究を行ってきました。音のない世界で生活する彼らは、様々なバリアを感じながら生活をしています。Ontennaを用いることで、ろう者と健聴者の間にある音というギャップが少しでもなくなれば嬉しいです。そして将来、世界中のろう者にOntennaを使ってもらえるよう、一生懸命プロジェクトを進めていきたいと思います。
企画・開発の意義
髪の毛は振動を知覚しやすく、蒸れや麻痺が少ないという特徴があります。また、手話をしたり家事をしたりする際にも腕に負担がかかりません。ろう者と共に様々なプロトタイプを作成し改良を重ねる中で、振動を知覚するには髪の毛がちょうど良いという意見がろう者から出ました。風が吹くとさっと髪がなびいて方向がわかるように、髪の毛が新しいユーザインタフェースとして役立つのではないかと感じた瞬間でした。
創意工夫
【ろう者と繰り返し製作した様々なプロトタイプ】 振動子を服の上に取り付けると振動が分かりにくかったり、直接皮膚に付けると蒸れや麻痺が気になるとのコメントがろう者からありました。また指先や腕に装着すると手話や家事をする時に負担になってしまうことも分かりました。いろいろな部位を試していくうちに、直接皮膚に触れず、テンションがかかるため振動を知覚しやすい髪の毛をユーザインタフェースとするアイデアが生まれました。 【3Dプリンターを用いた形の検討】 3Dプリンターを用いて様々な形を出力しました。基板を囲むだけの四角い形だと、「角があって痛い」「頭に着けると恐い」と言われてしまったため、だんだんと丸みを帯びた形状となりました。さらに、髪の毛を掴む面積を拡大するアーチ構造や、マイクの部分に凸を付けて位置を分かりやすくする工夫を施しました。
仕様
22mm(W)×15mm(H)×55mm(D) 12g
どこで購入できるか、
どこで見られるか
富士通株式会社
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
審査委員の評価
担当の審査委員
鹿野 護石戸 奈々子ドミニク・チェンマシュー・フォレスト
評価コメント
一般的に広まっていると思われる、障害者は健常者よりも知覚・認知能力が劣っているという不当なバイアスを覆すようなプロダクト思想、それを支える長年の研究開発の実績、そしてその「髪に装着する振動デバイス」というインターフェースデザインのクオリティを高く評価した。今後、障害者の知覚・認知能力はOntennaのような技術によって拡張され、その恩恵を健常者が受けるような時代が到来することを予感させてくれる点において、今年の「未来づくり」というテーマを最も本質的に体現しているといっても過言ではない。今後、Ontennaを介したユーザーの知覚体験、そしてユーザー同士のコミュニケーションのツールとしても発展されることに期待したい。
