受賞ギャラリー
2018
グッドデザイン金賞
絵本
1人称童話シリーズ
受賞対象の詳細
もしあの童話の主人公が自らの口で語ったら。1人称童話シリーズはそんな変わった着想から生まれた絵本です。「昔々あるところに…」でおなじみのスタンダードな昔話は、決まってその話法・視点は3人称。一方、本シリーズでえがかれるのは、そうしたいわゆる「天の声」ではなく、主人公たちの語られなかった(例えばの)胸の内に他なりません。桃太郎やシンデレラ、浦島太郎の視点をかりて、物語の世界を自らの目で見つめ、彼らになったつもりでその気持ちをひしひしと感じてみる。「他者の気持ちを感じる、想像する」ことを、子供達に楽しみながら体験してもらい、「共感と想像の力」を広げてもらうことが本シリーズの究極的な目的です。
※ 自動翻訳サービスDeepLを利用して生成されたテキストの場合があります
プロデューサー
鈴木久恵
ディレクター
久下裕二
デザイナー
市川千恵
詳細情報
発売
2017/05
価格
1,080円
販売地域
国内
背景
他者の気持ちを推し量ることはコミュニケーションの基本であり、成長するにつれてますます重要になる能力。それゆえに「相手の気持ちになりなさい!」と親や先生は口を酸っぱくし、場合によっては厳しく諭すわけですが、実際にそうした想像力、共感力は、残念ながら説諭のみでは身につきません。あらゆる能力がそうであるように、身につけるには「実践」が重要。子供たちが楽しみながら他者の心を感じたり、想像したりできる。読書を通じて、その力を涵養するために本書は制作されました。とりわけ、制作に際して念頭においていた社会背景があります。いじめ問題の陰湿化です。いじめはいつの時代も存在しますが、近年はSNS上にも蔓延しており、顔の見えないやりとりのためますます想像力が欠如しがちに思えます。他者の気持ち、中でも「痛み」に対してしっかり想像力が働くように。そうした観点で本書が、子供達の成長に役立つことを願っています。
経緯とその成果
客観から主観へ。まなざしと気持ちの絵本。
デザイナーの想い
1人称で書かれた文、そして1人称視点で描かれた絵、これにより「出来事」から「心」へと物語の重心が変化します。慣れ親しんだ物語だからこそ新鮮な読み味が生まれ、同時に、知られざる「他者の気持ち」を体験可能となります。とりわけ絵は、両ページのセンターにレイアウトし、本を手に持った子供がそのまま主人公視点となって深く没入感できるよう配慮しました。さらに本書の最後に待っているのは、「君が桃太郎ならどんな桃太郎?」の問いかけ(「シンデレラ」「浦島太郎」も同様の問い)。読んで終わるのではなく、物語を自分のこととして改めて捉え直す機会を用意。自らの心と対話し、自分なりの桃太郎(シンデレラ、浦島太郎)を想像・創造することこそが、本書の真のエンディングです。
仕様
菊版変型42P
どこで購入できるか、
どこで見られるか
全国書店、及びamazon
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
審査委員の評価
担当の審査委員
原田 祐馬安東 陽子濱田 芳治宮沢 哲Jung-Ya Hsieh
評価コメント
読書を通した新しい体験が未だ残されていたとは大きな発見だろう。誰もが知っている童話が一人称になるだけで、子どもたちが他者を想像する背中を押し、読み聞かせをする大人にも新しい視点を生み出していくことに評価が集まった。なりきることはごっこ遊びの定番だが、静かになりきれる「一人称童話」シリーズは、ごっこ学習という新機軸なのではないだろうか。今後の展開にも期待したい。
