RC造3階建集合住宅内の2住戸を1住戸に改修した。多様な作業に利用可能な広いキッチンテーブルを中心とした、利用方法の自由度が高い住戸内部の空間構成を周辺環境にもつなげることで、賃貸マンション内の一角に、新しいライフスタイルの場を組み入れた。建物全体を多様な生活の集合体として生まれ変わらせる長期計画の第1段階である。

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大和船舶土地株式会社　鈴木祐一、鈴木康太、瀬光真莉子

神戸芸術工科大学プロジェクトチーム（紺谷和弥、花田佳明、川北健雄）＋COCCA（今津修平、北川浩明）

2020/04

国内

神戸市須磨区神撫町4-3-41

本プロジェクトが位置する板宿は六甲山麓西端部の歴史ある地区だが、高度成長期以降に大量供給された戸建ておよび集合住宅の老朽化と空き家の増加が問題となっている。一方で、最寄駅が山陽電車と市営地下鉄の結節点であり、神戸中心部と比べれば家賃の割安感があることから、近年では小さな事業所やSOHO、私的な活動拠点としても利用できる居住空間を求める人々が移り住むきざしが見え始めている。私たち不動産事業者・建築家・大学の3者共同チームは、このような状況の中で、立地環境の潜在力を生かした個性的な住居を、多様なニーズに応えられる形態で提供し、大量に存在する画一的な不動産ストックを再生して新たな価値を与えることをめざしている。そして個別案件ごとに異なった立場からの発想をぶつけ合い、多くの実践を行なってきたが、今回の応募対象も、そのような地域全体の価値向上をめざすプロジェクトの一環である。

対象住戸は、地域に根ざす事業者が数年前に購入した3階建RC造、総戸数12戸の賃貸マンションの中にある。空き住戸が生じるたびにリノベーションを行い、建物全体を、画一的で閉鎖的なプランの集合体から、多様で開かれた生活の場へと、徐々に変容させていく計画である。今回、2住戸を1住戸へと再編成するにあたっては、学生の発案による「地域に開かれたキッチン」というアイデアを出発点に、人々を迎え入れることで暮らしが地域社会と結びつくような住居モデルの創出をめざした。具体的には、対象住戸を大きなキッチンテーブルだけがある空間（室1）と、就寝兼作業スペースとしての大きな空間（室2）、そして両者から使える水廻りのコア、の３つに組み替えた。これらは全体が円環状の連続した空間となっており、２つの大きな空間は、それぞれが専用の入り口を持つことで、生活の場としても、仕事の場としても、フレキシブルに機能する。

鉄筋コンクリート造地上3階建集合住宅（1979年建設）の1階北西角に位置する賃貸住戸（元2住戸を1住戸に改修）。 住戸専有面積：83.98㎡、専用テラス・庭：46.25㎡。玄関2箇所。住居はもちろん、事務所、店舗等利用可。共用部への看板設置相談可（共用玄関周辺に設置スペース有）駐車場（1台）および駐輪場有。