受賞ギャラリー
2020
グッドデザイン賞
公共図書館
松原市民松原図書館
受賞対象の詳細
松原市の中央図書館の建替え計画である。計画地は既存図書館に隣接するため池の一画である。設計施工一体型のプロポーザルによって、敷地特性を活かした建ち方や、これからの図書館のあり方が求められた。これに応えるため、空間・技術・施工が融合した建築を目指した。
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デザインのポイント
- 建築と土木の技術を活かした外壁によって、ため池の中に合理的に建設することを実現
- 厚い外壁と絞られた開口部によって、自然のゆらぎを感じる静謐な読書を実現
- 600mm厚のコンクリート外壁によって、温熱環境の制御と自由な内部構造を実現
デザイナー
MARU。architecture/ 高野洋平、森田祥子

詳細情報
利用開始
2020/01/25
設置場所
大阪府松原市田井城3-1-46
背景
松原市には、農業用水を確保する為のため池や住宅地の中に点在する巨大な古墳の風景がある。これらは、人間の手でつくられた「人工物」でありながら、永い時間を経ることで、あたかも「自然物」のように街の日常的な風景となっている。本計画は、ため池の一画が敷地として設定されており、これを埋め立てて建物をつくることが想定されていた。近年は建設用地を確保するための一つの手法となっていると聞く。しかしながら、長い時間軸でこの場所のことを想像すると、ため池という環境を受け入れながら、その中に力強く建ち続ける建築をつくることこそが街の歴史に寄り添っていくあり方であるように思われた。元来、水と建築は相性が悪い。他方、ダムや擁壁のような土木物は水と接しながら悠然と存在している。それは単なる性能面の違いではない人工物としての存在としての強さである。そこで私達は、時代を越えていく建築として土木的な建ち方を考えるに至った。
経緯とその成果
本計画は設計・施工一体型という特徴を持つ。前述の土木的な建築のあり方を実現する上で、設計・施工・エンジニアリングを一体的に考えることを重要視した。て設計から建設までが2年間という短工期で限られや予算の中でつくるという与件を考慮すると、埋め立ては非合理であり水底から直接建設することに利があった。また、コストを削減する為に、コンクリートの外郭をつくることで建物としての大枠の性能を確保してしまうことを考えた。通常の約3倍の600mm厚のコンクリート壁は、建物の地震力をすべて担うとともに、必要な断熱性能の大部分を確保することができる。更に本の紫外線劣化や読書環境を考えると、開口部分を絞っていくことに利がある。ベニヤ型枠の荒い表情もあいまって物質製の強い壁が出来上がった。この量感のある壁に包まれた内部空間は、窓の外を行き交う人々や水のゆらぎを対比的に切り取り、ゆっくりとした時間を刻んでいる。
仕様
敷地面積:1643.57㎡/ 建築面積:1043.24㎡/ 延床面積:2987.33㎡/階数:地下1階地上3階 塔屋1階 /構造:RC造一部鉄骨造
どこで購入できるか、
どこで見られるか
GA JAPAN164号/新建築2019年5月号/日経アーキテクチュア4月23日号
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
審査委員の評価
担当の審査委員
伊藤 香織五十嵐 太郎山崎 亮山梨 知彦
評価コメント
パブリックスペースというと、とかく議論は、施設や空間を如何にパブリックに対して「開く」かをテーマにしたものに集中しがちである。本計画は図書館であるため、広くパブリックにその存在を開いて示しつつ、プログラム上必要とされる静寂さを確保するために「閉じる」かという2つの相異なる要求を同時に満足する必要があった。建築家は、開かれた水盤の中に極厚の外壁を持つ施設を彫塑的に配するというデザインで、見事にこの難問を解決している。
