受賞ギャラリー
2021
グッドデザイン賞
美術館
磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館 (SoKo)
受賞対象の詳細
人口減少地域の空き公共施設問題と、アート界の作品保管スペース問題をマッチングした、「倉庫」という運営概念の美術館。この地で開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の拠点施設のひとつ。旧小学校校舎をコンバージョンした展示空間が、来訪者に「アートは日常のなかにありうるものである」という感覚をもたらします。
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デザインのポイント
- 人口減少地域における空き公共施設問題と、アート界の保管スペース問題をマッチングした「倉庫」美術館
- 世界最大級の地域型アート・イベントの拠点施設として、従来の建築タイプを変革する新しい美術館像を表現
- 旧小学校校舎と展示空間の融合が日常/非日常性の揺らぎを生む、リノベーションにしかできない空間デザイン
プロデューサー
十日町市
ディレクター
北川フラム
デザイナー
山本想太郎、山本想太郎設計アトリエ

詳細情報
利用開始
2015/07
設置場所
新潟県十日町市角間未1528番地2
背景
美しい里山景観を有する新潟県十日町市は、世界最大級のアート・イベント「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の開催地として知られる一方で、日本の多くの地域と同様に人口減少を主背景とした様々な社会問題も抱えています。2000年にはじまった芸術祭においては、アートと地域という異質なものの関係性を持続性のある形で深め、地域活性化につなげる方法が模索されてきました。 またアート界も多くの問題を抱えています。「アートは管理された環境で鑑賞するもの」と教育するかのような従来の公共美術館のあり方は、アートと社会の日常との距離を広げ、日本のアート市場が先進国の中でもきわめて小さい一因ともなっています。またアートの保管場所の少なさと管理コストもまた、アート流通のボトルネックとなっています。 本プロジェクトは地域型アート・イベントとデザイナーがこれらの背景と向き合い続けるなかで構想されたものです。
経緯とその成果
廃校の小学校校舎を芸術祭の拠点施設にコンバージョンする計画に際し、地域の問題(空き公共建物の維持管理)とアート界の問題(アートの収蔵スペース不足)をマッチングして、「倉庫」という持続性のある運営概念をもつ美術館をつくることが考案されました。倉庫美術館は「アートを鑑賞する場所」ではなく「アートというモノが置いてある場所」です。小学校で過ごすような日常性と濃密なアート展示の並存が生む日常・非日常のゆらぎによって、アートが、日常の中にありうる存在であることを感覚させます。各空間も新旧の建築要素が並存するようなデザインとなっており、整備された「空の展示室」から、体育館の巨大さと武骨さを残す「地の展示室」へと降りていく動線も、対照的な質の空間内を彷徨うような鑑賞体験を生みます。このように安易なノスタルジー訴求を超えたリノベーション表現を駆使して、既成の「美術館」という形式の批評的解体を目指しました。
仕様
廃校となった小学校校舎を全面コンバージョン(用途変更+リノベーション)した美術館/ 敷地面積 6,567.00㎡/建築面積 1,425.80 ㎡/延床面積 1,989.99 ㎡/ 構造 鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造) 地上2階 地下1階/ 最高高さ 17.923m
どこで購入できるか、
どこで見られるか
新潟県十日町市角間未1528番地2
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
審査委員の評価
担当の審査委員
伊藤 香織五十嵐 太郎西村 浩平賀 達也
評価コメント
アートの制作,鑑賞,保管のための空間の関係には,バリエーションが見られるようになってきており,その模索が人々のアートとの接し方に変化を与えている.本美術館は保管と展示の空間であるが,これは,人口減少地域の美術館という日常とトリエンナーレという3年に1回のハレの期間の接点としても巧みに機能しているように思われる.廃校のコンバージョンながら美術館としての静謐な空間の質を獲得している点も評価される.
