開催概要
今年度のグッドデザイン賞の開催概要についてまとめています。近年、デザインへの期待が高まってきていることを認識し、今こそさらにデザインの持つ可能性を問い、その成果を広く社会に示すべく実施しました。事業経緯は以下の通りです。
開催要項主催・後援グッドデザイン賞の理念審査の視点本年度の事業指針賞の種類開催メッセージ
開催要綱・要領
「開催要綱」は、グッドデザイン賞事業の基本的な事項を定めたものです。この要綱に基づき、要領を定めています。
主催・後援
公益財団法人日本デザイン振興会
経済産業省 / 中小企業庁 / 東京都 / 日本商工会議所 / 日本貿易振興機構 (JETRO) / 国際機関日本アセアンセンター / 日本経済新聞社 / NHK / World Design Organization
グッドデザイン賞の理念
審査の視点
グッドデザイン賞では、かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価しています。応募されたデザインの背景・プロセス、目的と達成した成果などの様々な観点による複眼的思考を基本に、以下の「審査の視点」についてその是非を問いながら、総合的なバランスにおいてグッドデザインか否かを判断します。
使いやすさ・分かりやすさ・親切さなど、ユーザーに対してしかるべき配慮が行われているか
安全・安心・環境・身体的弱者など、信頼性を確保するための様々な配慮が行われているか
ユーザーから共感を得るデザインであるか
魅力を有し、ユーザーの創造性を誘発するデザインであるか
新技術・新素材などを利用または創意工夫によりたくみに課題を解決しているか
的確な技術・方法・品質で合理的に設計・計画されているか
新産業、新ビジネスの創出に貢献しているか
新しい作法、ライフスタイル、コミュニケーションなど、新たな文化の創出に貢献しているか
持続可能な社会の実現に対して貢献しているか
新たな手法、概念、様式など、社会に対して新たな価値を提案しているか
過去の文脈や蓄積を活かし、新たな価値を提案しているか
中・長期的な観点から持続可能性の高い提案が行われているか
時代に即した改善を継続しているか
本年度の事業方針
2024年度のグッドデザイン賞は、昨年度に引き続き齋藤精一氏を審査委員長に、倉本仁氏及び永山祐子氏を審査副委員長に迎えました。審査においては、昨年度のフォーカス・イシューから導き出された「勇気と有機のあるデザイン」をテーマに、グッドデザイン賞の審査の視点(人間・産業・社会・時間)に加えて、従来の慣習や既成概念にとらわれずに、一歩踏みだす志を持ってデザインに取り組んでいるかどうか、また、関わる人や場所、場面などに応じて柔軟に対応できるように考えられているかどうか、その姿勢も問いました。
要点は以下の通りです。
国内外の優れたデザインの発見及び応募促進
応募受付期間中には応募説明会や応募相談会を国内外で多数実施し、ポテンシャルのある応募者を動機づける活動を行いました。中国大陸においては、各地のメディアと連携を続け、ソーシャルメディアやウェブ広告などの複数のチャネルで広告を展開し、応募促進をはかりました。台湾では、2022年度から継続して実績のあるポッドキャスト・チャンネルで、日本の優れたデザインに関する情報やトークを発信し、グッドデザイン賞についての理解促進につなげました。
オウンドメディアによる情報発信機能の強化
昨年度から立ち上がったグッドデザイン賞公式ウェブサイトの情報発信コーナーである「.g Good Design Journal」は、審査の実施状況や受賞者及び受賞デザインの紹介を連載し、デザイン・メディアとして地位を確立しました。また、facebookやInstagramなどのSNSの公式アカウントは、年々フォロワー数が増加しています。適時適切なコンテンツ更新によって、グッドデザイン賞や受賞対象を一般ユーザーに身近に感じてもらうことができるメディアとして、さらに発信力を高めました。
「グッドデザイン大賞」選出方法の変更と「みんなの選んだグッドデザイン」企画の実施
本年度から、審査委員会の選ぶ最高賞である「グッドデザイン金賞」の受賞対象全てをグッドデザイン大賞の候補とし、その年の受賞対象の中で、最も優れたデザインと認められるもの1件を選ぶという趣旨から、デザインのプロフェッショナルである審査委員と受賞者のみの投票でグッドデザイン大賞を決定することとしました。大賞とは別に、受賞展に来場した方がどなたでも投票できる「みんなの選んだグッドデザイン」という投票イベントも実施し、優れたデザインについて広く関心を持っていただく機会としました。
賞の種類
すべての応募対象の中で、デザインが優れていると認められるものに「グッドデザイン賞」が贈呈され、さらにその中から特に優れた100件が「グッドデザイン・ベスト100」として選出されます。その後、審査委員会によってグッドデザイン・ベスト100の中から「グッドデザイン金賞」、「グッドフォーカス賞」が選出されます。 「グッドデザイン大賞」は、グッドデザイン金賞の中から審査委員とその年のグッドデザイン賞受賞者等によって選出されます。
2024/10/16
勇気と有機のあるデザイン
今、デザインの持つ「さまざまなモノ・コトをより良くする」力は、あらゆる場面や場所でさらに求められています。
かつてデザインは物理的な存在に対してのみ機能すると考えられていた時代がありました。しかし、今ではモノを生み出すプロセスや思考自体にもデザインが要求されます。とりわけグッドデザイン賞は一つの創作物を多種多様な断面から分析し、さまざまな分野の審査委員が共通のアウトカムを持ち議論を重ね審査を行う、世界的にもユニークなデザイン賞です。
グッドデザイン賞がいま探求するデザインとは、すべての人が直面する個々で少しずつ違う問題・課題に対して改善の力を与えてくれる存在であり、生活をよりいっそう美しくしてくれる活動であると考えます。それは、社会を単に一つの大きな集団として捉えるのではなく、実践的創造に関わる人々が解像度高く分析・分解することで、はじめて見出すことができるものです。
2024年度のテーマである「勇気と有機のあるデザイン」は、昨年度のフォーカス・イシューを編纂する過程で生まれました。デザインに関わる人が勇気を持って一歩踏み出し、しなやかに美しく、場面や場所に応じた有機的な考えと体制によって、アイデアを社会に実装していくこと。そうしたデザインの潮流をさらに探求し、さまざまな分野や部門から生まれるモノ・コトの、ときに大胆でときにささやかな、強いデザインを見つけたいと思います。
今年度も、よりよい社会を創り上げる「勇気と有機のあるデザイン」に出会えることを楽しみにしています。
2024/10/16
状況を切り拓く力
今年もグッドデザイン賞が始まります。 昨年の審査会から見えてきた潮流から私たちが見出したテーマは「勇気と有機のあるデザイン」。 気候変動や大きな災害に脅かされる日々の暮らし。停滞感に包まれ、少しずつ、しかし確実に勢いを削がれていく経済、そして社会。世界の人々とともに共有できていたと信じていた良識は戦争・紛争に姿を変え、私たちに大きなショックを与えました。しかし、楽観的に未来は明るいと言いづらくなったこのような状況下でも「ものづくり」の過程を通して見えてくる人々の、より良い変化を望む力はとてもポジティブでまぶしく感じられました。
今、デザインに求められていることの一つに「状況を切り拓く力」があります。 停滞した状況に向かって声を上げる個人の勇気と強い意志でアイデアが提起され、それを受け止める形で企業や組織が有機的に手を組み、行動をともにして、社会に実装される大きなうねりへと発展させる。デザインと総称される活動にはそんな力があるのです。 私たちは創作者の描く事物が人々の暮らしに浸透してより良い変化を生み出すことを期待し、また同時にそれが自然環境や多くの動植物にとって過不足なくバランスする状態であって欲しいと願っています。社会に向けた大きな視野とともに、細部にこだわるものづくりへの執念にも出会いたい。 今年度もグッドデザイン賞を通して強い意思、多様な提言に触れられることを楽しみにしています。
2024/10/16
デザインの力の向かう先
昨年、私は「デザインの力を信じているか」という問いをめぐってメッセージを書きました。今年は、そこから一歩進めて「デザインの力の向かう先」について考えたいと思います。
2023年度のテーマは「アウトカムがあるデザイン」でした。そして、受賞作品全体の傾向、潮流から導き出されたのが、今年度のテーマである「勇気と有機のあるデザイン」。有機的に分野を超えてしなやかに連携しながら、勇気を持って踏み出す、そんな姿がイメージされます。その一歩を踏み出す方向がどこに向かっているのか。それがとても重要です。
最初に踏み出す先が、果たしてより良い未来に向かう道につながっているのか。方向を間違えばそれは大いなる労力の無駄遣いになってしまう可能性もあります。私たちはたくさんのアイデアを出し、デザインを決定します。それゆえに資源の無駄遣いと同じくアイデアの無駄遣いは見直すべきです。1人の人間が考えられる量は時間的、質的にも限界があり、デザインの力を最大限発揮し大きく歩を進めていくには、方向を正しく見定める必要があります。一方で正しき道とはどちらなのかという難しい問いもあり、それを見定めていくには、トライ&エラーを繰り返しながら模索していくしかないというのも事実です。
いずれにしても多くの労力をかけなければ正しき道を見つけられず、そこからまた沢山の労力をかけてデザインをし、やっとゴールを目指すしかありません。1人では限界はそこまでですが、多くの人のトライ&エラーが共有されればもっと早くそして遠くにゴールを設定することができるはず。それがこの賞の意義だと考えています。
皆でアイデアを寄せ合い、そのプロセスを共有し、他の誰かのヒントになる−−今年のグッドデザイン賞がそうした場になることを願っています。「勇気と有機のあるデザイン」をテーマに、デザインプロセスの中で、どのように困難に立ち向かい有機的に勇気を持って乗り越えたのか、ぜひ応募作を通じて共有していただければと思います。