審査基準から見る「よいデザイン」の変遷
グッドデザイン賞は、時代の変化とともに「良いデザインとは何か」を探求し、進化を続けてきました。応募による審査が始まった1963年以降から残る審査基準の変遷には、その過程が現れています。その変化の過程を視覚的に表現し、直感的に認識するため、審査基準をテキストデータとして自然言語処理し、頻出語や特徴語を抽出しています。
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高度経済成長期、テレビや電話機がほとんどの家庭に広がり暮らしが大きく変化した。また、1964年には東京オリンピックが開催し、街中にはピクトグラムが設置され「デザイン」という言葉も浸透し始めた。世界では、「地球は青かった」の言葉を残した人類初の宇宙飛行の成功や、ヒッピー文化やフォークソングのブーム、またポップカルチャーの始まりの年代でもある。
テキストマイニング:1964年の審査基準から
日本万国博覧会 (大阪万博)の開催とともにはじまった70年代。マイカーの普及率が上昇。ジャパンオリジナルの時代とも呼ばれ、自動車を始めとする日本の「ものづくり」が世界的に評価。インタント食品やハンバーガショップも浸透を始める。しかしオイルショックの発生も。80年代には昭和から平成へかわり、さらにバブル経済で華やいだ。とくに日本は、半導体で世界を席巻した。またこの時期から大気汚染のみならず、水質汚濁、自然破壊、など日本各地で公害が明確化し始める。
テキストマイニング:1975年の審査基準から 75年〜97年まで審査基準の変動はありません
90年代初頭にバブル経済が崩壊。一方で、1994年にはインターネットが日本に上陸し、爆発的に普及した。1998年には「ウィンドウズ98」「iMac」の発売、またGoogleが設立、1999年には世界初のインターネット接続の携帯電話であるNTTドコモの「iモード」が大ヒット。またスーパーファミコンや、プリクラ、4足歩行ロボット「AIBO」など電子機器が生活になくてはならないものとなり、価値変化の時代となった。
グッドデザイン賞は1998年以降、民営化しました。
テキストマイニング:1998年の審査基準から
21世紀の始まり。日本はデフレ経済であり地方過疎化や貧富格差など社会課題が顕在化し始めた。世界では、9.11同時多発テロが発生。また「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」が開催され、地球温暖化などエコ問題が意識され始めた。またインターネットがコミュニケーションツールとして定着し、SNS・ブログなどのサービスが登場。価値観の多様性が視覚化された。
テキストマイニング:2000年の審査基準から
2011年に国内の観測史上最大のマグニチュード9.0 の巨大地震、東日本大震災が発生。震災にともない、防災、地域社会への意識の高まりや、原発のあり方からエネルギー政策に対して注目が集まるなど、さまざまな変化が見られた。また国内のインターネットの利用者は1億人を超え、音声認識AIの開発や、キャッシュレスの浸透、ドローンなど新しいテクノロジーの進化も続いた。
テキストマイニング:2011年の審査基準から
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、世界各国でロックダウンや入国制限などこれまでにない緊急事態となった。感染症対策としてマスクの着用、ソーシャルディスタンス、また職場や学校などあらゆる場所でオンライン環境が取り入れられるなど「新しい生活様式」が実践された。また、持続可能な開発目標(SDGs)の浸透によりサステナビリティへの意識の高まりを見せている。
テキストマイニング:2020年の審査基準から